
Column_2009.09
アペリティフ(食前酒)の効用
「とりあえずアペリティフ」
「とりあえずビール」
2つのセリフの目的と結果は同じ。
フランスの習慣と思われがちなアペリティフだが、日本の多くの人たちは実は日々アペリティフを楽しんでいる。
「とりあえず」の名のもとに、これから過ごす時間のリズムを手に入れている。
自分たちの間(ま)を手に入れるためにまず一杯を注文し、楽しい時間の準備をしているのだ。
一杯を飲みながら、
昨日今日の出来事を話したり、
離れ離れだった日々を話したり、
さて今日は何を食べようかと一緒にワクワクしたり。
共に一席設ける喜びを、
さあ今から楽しむぞという意気込みの空気を、
とりあえずの10分、20分、なんなら30分でも楽しめばいい。
これがアペリティフの時間。
SALON DU VENDERDIでは色々なアペリティフをご用意してますが、
今夜は「キールロワイヤル」をご用意しましょう。
「いらっしゃいませ 」
しなやかな身のこなしで席に着かれるあのマダムをお迎えすると、無性につくりたくなるSEXY PINKのアペリティフ。
彼女の黒いワンピースとの相性は最高です。
辛口シャンパーニュにカシスのリキュールを落としたカクテル「キールロワイヤル」
シャンパーニュではなく白ワインを使う「キール」をさらにきらびやかにしたものです。
「キール」という名は1960年代のディジョンのキール市長に由来します。
彼がこうした飲み方を広めたとされますが、ブルゴーニュのアリゴテ種からできる、そのままでは酸味が強すぎるワインに、
やはりブルゴーニュでとれるリキュールを加えて飲む習慣はこの地方に昔からあったもののようです。
そんな物語を当然彼女は知っています。そんな知識は武器にもなりません。
彼女の唇に吸い込まれるピンクの泡。
ひとしきりそれに見とれた後は、彼女と過ごせる夜に心底幸せを感じましょう。
そんなあなたに彼女はすぐに気づきます。
そして、細く長いあの指で、ふたたびグラスを持ち上げ、さっきよりもゆっくり唇に運ぶでしょう。
「いま、なにが食べたい? 」
彼女がいたずらっぽく聞いてきたらこう答えます。
「もう一杯飲みながら決めようか。。」
夜は長いということに彼女は気づきます。
夜は朝が来るまで続く、
そんなあたりまえのことを二人で気づけるのもアペリティフの効用のひとつです。
ジェランHIRO
Column_2009.08
ドメーヌ・クリュー アルザス ピノ・ノワール キュベ・カッツ 2006

ケチャップの国のワイン評論家とその信者たちが、エレガンス&フィネスなワインを市場から消していった90年代→最近。
それにつられて、強烈なアタックと熱すぎるボディ、単調で胸やけをするほど濃い果実味、
そんな風味にしか賞賛を与えることができないかわいそうな人が日本にも増えてる気がしていた。
優雅さ&繊細さを味わう。
それは和食の民の僕らが最も得意とするところのはず。
日本庭園に感じる美しさの理由をすでにDNAに組み込まれている僕たちが最も得意とするところのはずだ。
そんな第二次ワインブームの悲劇をかいくぐってきたエレガンス&フィネスな赤ワインにとって、
夏という季節は多くの人にその魅力を見直してもらえるチャンスの季節。
高気温&高湿度の中、殺人的に「熱く」「濃い味」の赤ワインを飲むことは無いのでは?
シャンパーニュや白ワインだけで夏を過ごすのもいいけど、
それでも赤ワインが飲みたいな〜という日には、デリケートな果実味と綺麗な酸味の、たとえばこんな赤ワインがおすすめです。

Domaine Klur Alsace Pinot Noir Cuvee KATZ 2006
ドメーヌ・クリュー アルザス ピノ・ノワール キュベ・カッツ 2006
さっきまでかいていた汗も引いてくるでしょう。
暑い暑いと苦しんでいたしかめっ面もクールな笑顔に戻るでしょう。
暑さからの動悸も落ち着き、さわやかな北の大地の夏の空気があなたのまわりに現れるでしょう。
フランスのワイン産地で最も冷涼な土地「アルザス地方」
厳しい気候風土とストイックな人々が生み出すそのワインは、きっと真夏のあなたを癒してくれます。
キュートでセクシーな酸味と、後口にほのかに感じる苦味は、凛としたこの素材のお供にぴったり。
その姿を見るだけで静かなせせらぎを想わせる魅惑の食材、
今夜は「鮎」はいかがですか?

今夜の調理法は「コンフィ」
一日目は塩とジュニパーベリーでオイル漬け、
二日目は一定温度を保ちながらオイルで煮込みます。温度がすべて。この二日目で大方の仕上がりが決まります。
三日目はいよいよ焼き上げます。カリッと仕上がった表面を崩すと中からはふんわりした苔の香りの白身が現れます。
デリケートな身を味わい、ワインをひとくち、
隠れていた天然果実の甘味がワッと現れ、鮎の身の甘味をさらに引き立てます。
コンフィで仕上げた鮎は、頭も骨も丸ごと食べれます。
そのほのかな苦味を楽しんだ後にまたワインをひとくち、
ワイン単体で飲んでいた時にはひかえめだった苦味がぽっと花開き、鮎の苦味と調和をとります。
「私は十分輝いているわ。キュートでセクシーだとみんなが言ってくれる。でも私も知らない私を引き出してくれたのはあなただった。」
ワインは鮎にそうささやきます。
エレガンス&フィネスなワインはひとくちごとにあなたを魅了していくでしょう。
決してはじめのひとくちで判断なさらぬよう、大人の付き合い方をおすすめします。
僕たち日本人をはじめ、多様な文化に生きる「世界のほんの一部の人々」の大きな特徴は「手にした選択肢の多さ」です。
こんなに多様な食文化を楽しめる国が世界190数カ国の中、一体いくつあるというのでしょうか。
人が造ったものを評論してしか稼げないようなくだらない仕事をしてるやつらに惑わされること無く、
この恵まれた環境で大いに、自由に、自分の味覚の可能性をお試しになることをおすすめします。
ということで、、僕の言うことも当てにはしないでください(苦笑)
人の意見はあくまで参考ということで。。
試したあなたが感じたこと、それが正解なのです。
ワインを使って楽しい時間を生きてほしい。
多くのワイン農家さんはそう願っています。
ジェランHIRO
Column_2009.07
ブランケット・ド・リムー カルテ・ノワール (ジャン・バブー)

泡のワインは予感に満ちている。
沸き立つ泡が生み出す華やかさと、
あのものものしい針金の衣装を脱がせて栓を抜くときの緊張感は、
これからなにかが始まろうとしている場にふさわしい。
ストーリーの引き金は、その泡のワインによって引かれる。
愛を交わす前に予感を与えたこの泡のワインは、
愛の最中には高揚を与え、愛の後には鎮静を与える。
翌朝の、華奢に泡立つ残りのワインを飲み干し、二人の夜はせつなく終わる。
弱まった泡の感触をくちびるに残し、二人はそれぞれの時間へと出かけてゆく。
〜暴走サロンの妄想日記より〜
今夜は予感に満ちた泡のワインをいかがでしょうか。

Blanquette de Limoux CARTE NOIRE (Jean Babou )
ブランケット・ド・リムー カルテ・ノワール (ジャン・バブー)
南仏は地中海沿岸のラングドック地方で、シャンパンと同じ製法で造られる泡のワインです。
シャンパンと同じ製法とは「瓶内二次発酵」
文字通り瓶の中で二回目の発酵を行う製法です。
全ての酒は糖が発酵することでできます。ワインでいうところの糖はもちろんブドウが持つ糖。
ブドウの糖に酵母がはたらき、アルコールと炭酸ガスが生まれます。
その炭酸ガスを瓶の中で発生させ、そのまま瓶の中に閉じ込めてしまうのがこの製法。
ブドウから生まれる天然の泡です。
使われるブドウ品種はモーザック90%とシャルドネ10%。
リンゴのようなフレッシュな香り、熟成感のある酸味、そしてなめらかな口当たりは、
グリコーゲンたっぷりのいま時期の牡蠣によく合います。
特に加熱することによって磯の荒々しさがとれた牡蠣料理がよいでしょう。

例えばベニエ。
メレンゲの衣で揚げる料理です。
泡立てた卵白に、小麦粉、卵黄、レモンピールを加えた衣は、
牡蠣を薄く、軽く、カリッと、ふわっと包み込みます。
噛みしめると、その中から溢れ出てくる牡蠣の濃厚なエキス。
ひとしきりその悦楽を味わったところに泡のワインを流し込んでください。
マリアージュです。
二つの力が合わさり、牡蠣だけでは味わえない、ワインだけでは味わえない、新しい味が生まれます。
二人は交わり、あなた一人では味わえない、わたし一人では味わえない、新しい味がそこに生まれるのです。
泡のワインは、予感に満ちています。
ジェランHIRO
Column_2009.06
シャトー・メルシャン 甲州 シュル・リー 2008

衝撃的なその出逢いは3年前の4月。市内の、今はなきワインバー。
風が吹く日は支えたくなるようなもろさと、目の奥に潜んだ強い我を合わせ持つ彼女にしか出せない微笑みでした。
「牡蠣・・好き?」
・・・、貴女が・・好きです。
そしてその妖艶なソムリエールは、僕がかつて経験したことのない悦びを教えてくれました。
「大黒神島産バージンオイスター」

殻付き牡蠣「広島」&大黒神島産バージンオイスター
驚きました・・ 今まで食べていた牡蠣はなんだったんだろう・・・
透き通るような美しいミネラル感、雑味のない海の香り、鮮烈な塩味。
目を閉じて噛み締めると、まるで海の中にいるようです。
この牡蠣が育つ大黒神島は江田島の沖にある西日本最大の無人島です。
昭和48年、先代は大黒神島深浦の真珠漁場を買い取り、牡蠣筏漁場を設置しました。
この牡蠣がこんなに美しい味であることの数ある理由の内、最たるものはこの清浄海域でしょう。
牡蠣は一日に約200Lの 海水を取り込んでは吐き出し、餌であるプランクトンを取り入れます。
その取り込む海水が美しいか、美しくないかで味と安全度は大きく変わります。当然ですね。
その海水を汚す原因は主に人間が出す生活排水です。
生活排水の出ない無人島は、世界一美しい牡蠣を育てるにあたって最高の条件の一つなのです。
そしてこの牡蠣は一年を通して生食できます。
僕たちは四季折々の牡蠣の味を楽しめる人生を手に入れたのです。
牡蠣には日本酒が一番合うと思っていました。
白ワインに含まれるリンゴ酸が牡蠣の風味とぶつかり、
その酸味が牡蠣の味を覆いつくし、
鉄のような味に変わるのが不快でした。
しかしここの牡蠣は今まで食べてきたものとはミネラル感と塩味の強さが違いました。
パリで食べる牡蠣同様、僕たちの口に入るまで真水で清浄されることがないからです。
清浄は紫外線殺菌、濾過した島の海水で行われます。
その大黒神島の鮮烈なミネラルにはリンゴ酸が勝ちすぎることはありませんでした。
むしろ日本酒と合わせると牡蠣の味が強すぎる印象です。
さて、大黒神島の美しい海を食べたところで、今夜は日本のワインをいかがでしょうか?

シャトー・メルシャン 甲州 シュル・リー 2008
日本のトップシャトーが造り出すドライな白ワインです。
原料ブドウの品種はその名も「甲州」
牡蠣を噛み締めた時に飛び出してくる鉄分のエッセンス。
甲州種の強い酸味が加わった時にはじけだすフルーティーなミネラル感。
生命力がみなぎってきます。
その後生まれてくる渋味を含むこの牡蠣の後味は、
このワインが持つ青リンゴのような甘みの余韻と結婚し、
なんともいえない安堵感を僕たちに与えてくれます。
このワインは特にシュル・リーといって、
ワインを造る際に出る沈殿物(オリ)の上で
しばらく寝かせる製法を採用してます。
沈殿物からのポジティブな風味をワインに還元させるのが目的です。
それゆえ力強く深い風味を持ちます。
ワインの価格は極めてデイリープライス。
毎日飲める味と価格です。
こうオーダーしてみてください。
「生牡蠣を食べたいんですが、ドライな甲州はありますか?できたらシュル・リーで。」
お店の人が驚く顔が目に浮かびます。
そしてその人はあなたに最高のサービスをしようと、より一層がんばってくれると思いますよ。
ジェランHIRO

Column_2009.05
CAVES DE LA TOURANGELLE TOURAINE SAUVIGNON BLANC 2006
カーヴ・ド・ラ・トゥーランジェル トゥーレーヌ ソービニヨン・ブラン 2006

「今まで飲んだ中で一番おいしかったワインは?」と聞かれることがあります。
愚問‥
それって今までキスした人の中で誰が一番よかったか聞かれてるような感じ。
笑顔の女性がみんなカワイイように、健康的なワインはみんな魅力的。全員好きです。
ただ、ワインも、キスも、アレも、シチュエーションで味わいが違ってきますね。
だれと・いつ・どこでするか 、いや、どこで飲むか。
一番印象に残ってるワインはありますが、
アレはちょっと‥
この季節にオススメのワインと聞かれればお答します。
新緑が芽吹き始めるこの季節は、さわやかでイキイキした酸味の白ワインを休日の開放感の中で、
やはり休日の開放感にあふれた笑顔のヒトと飲みたいです。

CAVES DE LA TOURANGELLE TOURAINE SAUVIGNON BLANC 2006
今夜紹介するワインはフランス中央部ロワール地方の白ワイン。
フランスの庭園と言われるこの緑豊かな地方は、かつての貴族たちがこぞって別荘としての城を建てたことでも有名で、
いまでもそれらの古城巡りツアーは人気です。
ブドウの品種は「ソービニヨン・ブラン」
さわやかな酸味とグレープフルーツのような香りのワインになることが特徴のぶどう品種ですが、
このワインに関してはさらに花の蜜の香りが豊かなのも特徴です。
その香りはボクに田んぼに咲いていたレンゲの蜜を吸った日のことを思い出させました。
また友人はサルビアの蜜の香りににているとも。

今ジェランで春の料理としてお出ししているホワイトアスパラガスの料理には是非このワインを合わせたいものです。
歯ごたえを残してローストしたホワイトアスパラガス、桜マスのマリネ、豚バラ肉の瞬間スモーク、グリーンピースのピュレ、そしててっぺんには卵黄の味噌漬けをのせて。
春色満載のミルフィーユです。
春の食材たちの優しい甘みと、この白ワインの優しい甘い香りの相性の良さにはこの上ない快感・悦楽・ふわふわ気分を与えられます。
毎年地中海沿岸から北上していくアスパラ前線。
それがロワールの地にたどり着いた頃、かつての貴族たちもこのワインと共にホワイトアスパラガスを楽しんでいたかもしれません。
ジェランHIRO
編集部より
ご紹介したワインと料理はジェランで楽しめます。
"粋"な愛情がたっぷり詰まった空間にぜひ足を運んでみてください。

